目黒区出身 公認会計士 目黒の未来を考える

山村 まい -Official Web Site-

子どもを守る

保育園を子どもが安心できる場所に

2022年12月26日

保育園での虐待事件が相次いで発覚

2022年12月、静岡県裾野市の私立さくら保育園にて園児を虐待したとして保育士3人が暴行容疑で逮捕されました。

このほか、富山県富山市の認定こども園、宮城県仙台市の企業主導型保育施設、日野市の認可保育所、でも不適切な保育が行われていた事案が発覚しています。

まだ言葉で訴えることもできない子どもへの卑劣な行為に、保育園に通う子を親はもちろん、多くの人が強い憤りとショックを受けたのではないでしょうか。

虐待事件が発覚するまでの経緯

虐待が発覚するまでの経緯について、報道された内容を簡単にまとめます。

ケース①静岡県裾野市 私立さくら保育園

1歳児クラスの担任たちが園児の足をつかんで宙づりにする、頭をバインダーで叩く、容姿をバカにする発言する、泣いている動画を撮影してネタにする等の虐待をしていた。他の職員たちは口出しできる雰囲気ではなかった。同僚保育士が、2022年6月園長に内部通報。しかし園長は虐待の旨を市に報告しなかった。そこで同僚保育士は2022年8月に市に報告。市から警察に連絡がなされ、暴行容疑での逮捕に至った。

ケース②富山県富山市 本郷町保育園

20代の女性の保育士が泣き止まない園児を広さ3畳から4畳ほどの倉庫内に閉じ込めたり、移動させるために足をつかんでひきずったりするなど1歳児クラスの園児3人に虐待をしていた。2022年9月、同僚保育士が園長に相談、園長から当該保育士に事実確認を行い、自宅待機の処分とした。また別途 市にたいして電話で虐待の相談があったため、市から警察に連絡。警察は暴行容疑で捜査をすすめている。

ケース③宮城県仙台市 チャイルドルームきいろいくまさん

2022年10月、匿名で「保育所で不適切な保育があった」との情報が仙台市に寄せられ、市と所管する公益財団法人児童育成協会が2022年11月に立ち入り調査を行った。その結果、設置された防犯カメラの映像で3人の保育士が複数の園児に対して不適切な保育をしているのが確認された。施設は1人を出勤停止処分、2人を減給処分とした。

ケース④東京都日野市 吹上多摩平保育園

職員1人が園児の全身を締め付けたり、たたいたりする・大声で怒鳴りつける・懲罰と称して部屋に放置するといった虐待を行っていた。

市が情報を把握したのは定期的な実地指導で職員らに個別ヒアリングをした2022年3月。その後実施した、園児の保護者への聞き取りなどももとに行為を認定した。市はこれらの行為を認定したとして、7月22日付で同園に改善勧告をした。児童に対する虐待防止のために適切な措置を講ずることや、人権に配慮し、人格を尊重した保育を行うことなどを求めた。

園側は市に対し、虐待の事実を否定。市はその後、改善が図られていないとして2022年12月16日、施設名などを公表した。

虐待発覚には職員・自治体のチカラが必要

虐待が発覚したケースを見てみると、虐待発覚には保育園職員、自治体のチカラが必要不可欠ということが良く分かります。

まずは保育園の実態を把握している保育園職員からの情報提供があること。

そして情報提供を受けて自治体が真摯に対応すること。

虐待発覚できたのは上記2つが揃っていたからであり、おそらく全国には明らかになっていない虐待は多く隠れているのだろうと想像します。

なぜ虐待が起きてしまうのか?

では、なぜ虐待が起きてしまうのでしょうか。ここでは私の考えを述べます。

虐待が起きる要因①閉鎖された空間

虐待が起きる要因の1つ。「保育園が閉鎖された空間」。

保育士たちと子どもだけの世界、子どもたちは言葉で被害を伝えることもできないとなれば、何をやっても自由。他の目がなければ、ちょっと子どもでウサ晴らししちゃおう~という発想になってしまうのかもしれません。また同じクラスの担任と仲たがいしたら仕事しづらくなってしまうので「ちょっと この保育って変だよな?」と疑問を感じても伝えづらいといった環境でもあるのでしょう。

虐待が起きる要因②保育士の余裕がない

虐待が起きる要因の1つ。「気持ちに余裕がない」。

「時間通り進めないといけないプレッシャーがある」「人が足りていない」「忙しい」・・・だから常にイライラしている、子どもに言うことを聞かせたくて怒鳴ったり身体を押さえつけたりする。

現在の保育士配置基準では、0歳児は3人、1歳~2歳児は6人、3歳児は20人、4歳~5歳児は30人につき保育士は1人と決まっています。しかし、この配置基準では子どもたち1人1人に目は届きません。まだ一人でトイレに行けない子どもが「トイレに行きたい」と先生に伝えても、先生もトイレに連れていくような余裕も持てません。環境のせいで起きてしまう虐待もあるだろうと思います。

虐待が起きる要因③保育指針を理解していない

虐待が起きる要因の1つ。「ベテラン保育士のなかに、保育指針のアップデートをできていない人がいる」

保育所保育指針解説(平成 30 年3月)において「子どもに対する体罰や言葉の暴力が決してあってはならないことはもちろんのこと、日常の保育においても、子どもに身体的、精神的苦痛を与えることがないよう、子どもの人格を尊重するとともに、子どもが権利の主体であるという認識をもって保育に当たらなければならない。」ことは示されています。

保育指針は“子どもの人格を尊重すべき”とアップデートされているのに、昔から保育士をやっている方は昔の保育のまま ということが多いように思います。

虐待を防ぐために出来ること

内部通報しやすい環境づくり

虐待行為を止めたいと思いながらも、内部通報することによって保育園の運営が止まるかもしれない、自分自身も職を奪われるかもしれない、もしくは内部通報がスルーされて自分自身の立場が危うくなるかもしれない というリスクを考えると、内部通報を断念してしまうこともあるでしょう。

不適切な保育は見逃さない自治体の強い意志

内部通報を受けたら、自治体は必ず実態の調査を行い、改善を図ること。これを徹底しなければ内部通報は意味を持ちません。どんな小さな1件でも担当者レベルに留めず、関係部署にて共有し、調査を行う必要があると考えます。

防犯カメラ設置

防犯カメラが設置されること自体が抑止力になりますし、実態調査をした際に映像が証拠として利用できます。防犯カメラに映らない範囲での行為は防ぎにくいという懸念はありますが、一定の効果は見込めるでしょう。

通報者の身分と所得の保証

通報したことにより園の運営が止まり、通報者も職を失うかもしれません。他園への転職もしくは一定期間の所得補償があると望ましいでしょう。

人数に余裕のある保育園運営

保育園が運営できなくなった、となれば、通っている園児たちの行き先に困ってしまいます。全ての保育園において保育士配置基準よりも余裕のある人数で保育園運営をするようにしておけば、非常事態にて園児たちの受け入れることができます。

ゆとりある保育園の運営

余裕のある人員配置

保育士配置基準よりも余裕のある人数設定にして保育園を運営することで、先生たちの心に余裕が生まれます。いまの基準では、無理やり子どもに言うことを聞かす保育になってしまうのも無理はない面があります。

保育支援員などの増員

保育園の仕事は、子どもの面倒を見るだけではなく、掃除、オモチャの消毒、飾りつけ、遊びの準備、散歩の見守り等、多岐にわたります。保育支援員を増員すれば、先生たちの負担を減らすことができます。

保育指針のアップデート

保育園の運営に余裕が出てくるようになったら、先生たちに保育指針がアップデートできているか確認するため、自治体による研修や視察を採り入れます。

まとめ

保育園における虐待を防ぐためには、自治体による強い姿勢が必要です。

まずは虐待が起きてしまう環境を改善すること。

そして虐待が起きてしまった場合には即時かつ適切に対応すること。

目黒区も「不適切な保育を防ぐ!」という強い姿勢をもつ自治体にしていきたいと思います。

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